12月1日は一万円札が初めて発行された日だというのをご存じですか?
1958年、高度経済成長期の初めに聖徳太子の肖像が描かれた1万円札が発行されました。2024年度上期からはデザインが一新し、渋沢栄一の肖像が描かれた一万円札にリニューアルします。
今回はそんな一万円札の歴史と、渋沢栄一の新一万円札について解説します。
※掲載内容は執筆当時のものです。最新情報は事前にご確認ください。
目次
一万円札が初めて発行された日

一万円札が初めて発行されたのは、1958年12月1日でした。当時は戦後からの急速な復興が進んだ、いわゆる高度経済成長期。
特に1958年は「岩戸景気」と呼ばれる好景気で、労働者の収入が急増し、「三種の神器」と呼ばれる洗濯機、白黒テレビ、冷蔵庫が普及し始めました。
そんななか、インフレや経済成長にともない、「以前は国家予算レベルだった一万円」が商取引で利用されるケースが増えてきたことを背景に、一万円が発行されることに。
発行開始当時の大卒の初任給が1万3000円程度たったため、高額すぎるのでは?と反対する意見もありましたが、高度経済成長期のなか順調に流通量が増えていきました。
一万円札の肖像に選ばれた人達は?

一万円札の肖像にはこれまで聖徳太子と福沢諭吉が選ばれています。最初の一万円札の肖像は聖徳太子で、裏面は鳳凰。透かしは聖徳太子にちなみ法隆寺の夢殿でした。
その後、初代一万円札の偽造が増えたことなどから、1984年に発行された2代目一万円札が、福沢諭吉の肖像のもの。裏面は国鳥である雉(キジ)で、透かしは福沢諭吉でした。
あれ?今の一万円札と裏面が違うぞ?と思う人がいるかもしれませんが、実は福沢諭吉の一万円札は2パターンあります。
現在よく見る一万円札は2004年11月1日発行のもの。偽造防止のために新しい技術を取り入れた新バージョンが発行されたのです。
表面のデザインは微妙に変更されており、裏面は完全に新しい図案。左側に平等院鳳凰堂の鳳凰像が描かれました。
また、表目面の左下に角度を変えると色や模様模様が変化する「ホログラム」を取り入れたのもこの紙幣からです。
渋沢栄一の新一万円札はいつから?

政府は2019年4月9日、新紙幣の発行を発表しました。
新紙幣のうち一万円札が、渋沢栄一の肖像のもの。2021年9月1日から印刷はスタートしていますが、実際に使われるのはいつからなのか?発表によれば、2024年度上期が予定されています。
タイムラグが2年半以上あるのは、ATMや各店舗、自動販売機などで新紙幣導入のテストを行うため。新技術を使った紙幣なので、利用する際機械の障害が起きないよう、入念にテストするそうです。
渋沢栄一が一万円札に選ばれたのはなぜ?

新一万円札の肖像画に選ばれた渋沢栄一は、第一国立銀行や東京株式取引所(現東京証券取引所)をはじめとした約500の企業にの設立などに携わった実業家で、「日本資本主義の父」と呼ばれています。
そんな渋沢栄一ですが、なぜ一万円札の肖像に選ばれたのでしょうか?財務省によれば、現在も課題となっている産業の育成の分野で傑出した業績を残したこと、日本の近代化をリードするとともに大きく貢献したことが理由だそうです。
ちなみに、肖像は偽造防止の観点から、なるべく精密な写真が手に入ること、肖像画の人物が国民各層に広く知られ、業績が広く認められていることなどの観点から、明治以降の人物から選択しているのだとか。
実は、渋沢栄一は大蔵省に勤めていた時、国立銀行制度の構築に尽力し、国立銀行紙幣の図柄の選定にもかかわっています。
渋沢栄一自身、まさか将来自分が紙幣の肖像画に選ばれるとは思っていなかったことでしょう。
新一万円札の裏面は東京駅の駅舎

新一万円札の裏面は東京駅。1914年、辰野金吾の設計で竣工した「赤レンガ駅舎」で、2012年に復元工事されています。丸の内駅舎は2003年に国の重要文化財にも指定されました。
財務省によれば、選ばれた理由は明治・大正期を代表する建築物の一つであること。また、昔は東京駅が「日本の玄関」的な役割を担っていたこと、一万円札の基調色が茶色だったことからデザイン上の調和のため、などの理由があるそうです。
ちなみに、東京駅は渋沢栄一とのかかわりもあります。東京駅には埼玉県深谷市の「日本煉瓦製造」の赤レンガが使われていますが、その日本煉瓦製造は渋沢栄一が設立したものでした。
新一万円札には最先端のホログラム技術が

財務省は、偽造防止の観点から20年をめどに紙幣を刷新する方針で、今回の新紙幣でも偽造を防ぐための新しい技術がふんだんに使われています。
まずは、最先端技術を使ったホログラム技術を使用。見る角度によって、肖像画の3D画像の向きが変わります。
国の銀行券に3Dホログラムを利用するのは世界初!渋沢栄一の肖像がくるくる回っているように動きますよ。
さらにすかしには現行の「すき入れ」に加え、再現が難しいレベルでのかなり細かい模様を使用するなどの工夫を凝らしています。
渋沢栄一の新一万円札を楽しみにまとう!
初代一万円札が発行されてから63年。発行当時は戸惑いもありましたが、一万円札は多くの人に使用される、なじみのある紙幣になりました。
2024年には渋沢栄一の肖像が採用された新しい一万円札が登場します。新しい一万円札を楽しみに待ちましょう!

旅行メディアから出産を機に独立した、埼玉県在住のフリーライターです。得意分野は旅行と歴史と食事。最近、公園やテーマパークを中心とした県内の幼児連れのお出かけ先には詳しくなりました。埼玉県の魅力を皆様に伝えられるよう、頑張ります!