「古墳ガール」「墳活」といった新語を生み出すほど、古墳は若い世代を中心に静かなブームとなっています。
古墳というと、京都や奈良を思い浮かべる方が多いのではないでしょうか。実は関東にも古墳はたくさんあり、中でも埼玉県行田市の埼玉古墳群は関東最大規模の古墳群だと言われています。
この記事では、知ったらきっと行きたくなる埼玉古墳群の魅力を余すことなくご紹介します。
※掲載内容は執筆当時のものです。最新情報は事前にご確認ください。
埼玉古墳群とは?
埼玉に古墳があるなんて、意外に感じる方が多いのではないでしょうか。こちらでは、埼玉古墳群とはどのような古墳群なのか解説していきます。
国指定特別史跡に認定されている古墳
埼玉古墳群は、埼玉県行田市の「さきたま古墳公園」の中にあります。古墳群は5世紀後半から7世紀はじめごろまでに造られた9基の大型古墳で成り立っています。
埼玉古墳群は2020年に国指定特別史跡に指定されています。埼玉県内初の特別史跡であり、古墳群の特別史跡指定は67年ぶりで、東日本の古墳群では初とのことです。
さきたま古墳公園の周辺は、「埼玉(さきたま)」という地名が誕生したところとしても知られています。現在も「行田市埼玉(さきたま)」という住所があり、「さきたま史跡の博物館」の前に「埼玉県名発祥之碑」という石碑を見ることができます。
さきたま古墳公園の広大な芝生広場では桜まつり、火まつり、フリーマケットなどのイベントも開催されています。イベントの日以外でも、古墳の見物はもちろん、広場でのピクニック、ウォーキング、ランニングなど日常的に気軽に楽しむことができる公園です。公共の公園ですので入場料金はかかりません。
アクセス
埼玉古墳群があるさきたま古墳公園は、行田市の市街地から南東へ約1km離れた所に位置しています。
公共交通機関で行く場合は、JR高崎線吹上駅、JR高崎線行田駅、秩父鉄道行田市駅からバスを利用するのがおすすめです。
JR北鴻巣駅から行く場合は、バスがないため徒歩で1時間かかりますが、武蔵水路沿いにある花と緑あふれる「さきたま緑道」を歩けますので、天気の良い暖かな日にウォーキング感覚で歩くのも良いですね。
車で行く場合はさきたま古墳公園の無料駐車場を利用できます。
さきたま古墳公園の詳細はこちら
【埼玉】さきたま古墳公園内にある主な9基の古墳をご紹介!
それでは、埼玉古墳群がある「さきたま古墳公園」でどのような古墳を見られるのか詳しくご紹介します。
東西600m・南北900m程の範囲に、ぽこぽこと9基の古墳が点在しています。すべての古墳を見学しても所要時間は約1時間30分程度。徒歩で手軽にこれだけたくさんの古墳を見られるのは珍しいことです。
稲荷山古墳

稲荷山古墳(いなりやまこふん)は5世紀後半に造られた前方後円墳です。
前方後円墳とは「鍵穴」のような形をした古墳の形式のことを指します。稲荷山古墳は埼玉古墳群の中で一番初めに出現しました。古墳の上に稲荷社があったことから「稲荷山古墳」という名前がついたそうです。
12m近い高さがある古墳の頂上に登ることもできます。周辺の古墳の姿を見ると、高さを実感しますよ。
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発掘調査により、稲荷山古墳からは金錯銘鉄剣(きんさくめいてっけん)や甲冑、馬具、などの副葬品が出土しました。特に、金錯銘鉄剣には表裏合わせて115の文字が刻まれており、歴史を知る上で貴重な資料となっています。
これらの副葬品は1983年に国宝の指定を受けました。
公園内の埼玉県さきたま史跡の博物館で国宝展示室に常時展示されています。さきたま古墳公園に行ったらぜひ実物を見てみてくださいね。
丸墓山古墳

丸墓山古墳(まるはかやまこふん)は、日本最大級の円墳として有名で、その直径は105mあります。
埼玉古墳群の中で一番高く、頂上まで登ると他の古墳を見渡すことができます。発掘調査をされていないため詳しいことはまだわかっていませんが、6世紀前半頃に作られたのではないかと考えられています。
また、丸墓山古墳は1590年に豊臣秀吉家臣の石田三成が忍城を水攻めにした際に、城が良く見えたことから陣を張った場所だと言われています。
二子山古墳
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二子山古墳(ふたごやまこふん)は埼玉古墳群のほぼ中央に鎮座しています。
長さは132mあり、埼玉古墳群の中で最大の古墳です。真横から見ると、前方部と後円部が2つの山に見えるため「観音寺山(かんのんじやま)」とも呼ばれていました。
墳丘に登ることはできませんが、周りの遊歩道を歩きながら四方から古墳を眺められ、古墳の大きさを肌で感じることができますよ。
瓦塚古墳

瓦塚古墳(かわらづかこふん)は全長73mの前方後円墳で、公園内にある埼玉県立さきたま史跡の博物館に一番近い位置で見ることができます。
将軍山古墳
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将軍山古墳(しょうぐんやまこふん)は6世紀後半に築かれた全長90mの前方後円墳です。
発掘調査が行われ、馬具や環頭太刀などの副葬品が出土しました。埼玉古墳群の中では古墳の構造や時代が最もよく分かる古墳でもあります。
横穴式石室の実物を見学することができることで有名!
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将軍山古墳は、豊富な副葬品が出土した横穴式石室を実際に見学できます。
将軍山古墳の一部は「将軍山古墳展示館」として保護され、石室の内部は発掘当時の様子が復元されています。実際に出土した副葬品は博物館の本館で見ることができますよ。
愛宕山古墳
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愛宕山古墳(あたごやまこふん)は長さが53mで埼玉古墳群の中で最小の古墳です。
かつて墳丘の上に愛宕神社が祭られていたため、この名前がつきました。周囲には建物が多いため、見逃さないよう注意が必要です。
発掘調査では、人物埴輪、大刀・盾などの埴輪が出土しており、二子山古墳に近い時期の6世紀前半頃に造られたのではと考えられています。
奥の山古墳

奥の山古墳(おくのやまこふん)は長さ66mの前方後円墳です。
さきたま緑道を歩いて埼玉古墳群に向かうと一番最初に出迎えてくれるのが奥の山古墳です。
埼玉古墳群のほとんどが「大字埼玉」地区にありますが、奥の山古墳は「大字渡柳」に位置しています。大字渡柳の中でも東から見て一番奥にあるため「奥の山古墳」という名前がつきました。
鉄砲山古墳

鉄砲山古墳(てっぽうやまこふん)は長さ109mの前方後円墳で埼玉古墳群の中では3番目の大きさです。
江戸時代、この古墳の周辺を治めていた忍藩(おしはん)が砲術練習場として使っていたことから「鉄砲山」という名前がついたそうです。
発掘調査で出土した埴輪や土器の特徴から、6世紀の後半に作られたのではないかと言われています。
中の山古墳

中の山古墳(なかのやまこふん)は長さ79mの前方後円墳です。
後円墳部分はかつて畑になっていたため、細長く変形しています。奥の山古墳と同じ「大字渡柳」に位置し、埼玉古墳群の南端にあたります。取り壊されてしまい現在は見ることができない戸場口山古墳(とばぐちやまこふん)と奥の山古墳の間にあることから「中の山古墳」という名前がつきました。
出土した土器の特徴から、6世紀末から7世紀初期に作られた古墳だと考えられており、この時期は前方後円墳が作られなくなった時代であることから、中の山古墳は埼玉古墳群の中で最後の前方後円墳だと言えます。
埼玉県さきたま史跡の博物館をご紹介!

さきたま古墳公園に来たら、埼玉県さきたま史跡の博物館もぜひあわせて見学してみましょう。
稲荷山古墳から出土した金錯銘鉄剣をはじめとした国宝の数々や、瓦塚古墳で発見された珍しい埴輪の数々など、ここでしか見ることができない歴史資料を存分に見ることができますよ。
展示施設は「本館」と「将軍山古墳展示館」の2つに分かれます。こちらでは、さきたま史跡の博物館本館で見られるもの、体験できることをまとめてご紹介します。
料金表
一般 |
<大人>200円 / <高校生・学生>100円 |
中学生以下、障害者手帳等を持っている方(付添1名含む) |
無料 |
埼玉県さきたま史跡の博物館の詳細はこちら
国宝展示室
さきたま史跡の博物館の本館には、国宝展示室と企画展示室の2つの展示室があります。国宝展示室では、国宝を含む埼玉古墳群やその周辺の遺跡の出土品を見ることができます。
国宝金錯銘鉄剣が展示されている
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さきたま史跡の博物館の目玉は「国宝金錯銘鉄剣」です。金錯銘鉄剣は稲荷山古墳から出土された数々の副葬品のひとつで、墳頂にある埋葬施設で発見されました。歴史的価値が極めて高いため、1981年に重要文化財、1983年に国宝に指定されています。
鉄剣の全長は73.5cm。剣身の中央に、表面57文字、裏面58文字の計115文字の銘文が刻まれています。銘文の内容は、この鉄剣の作者である「ヲワケ臣(おわけのしん)」という人物が、当時の日本の支配者「ワカタケルの大王」に政治の補佐役として仕えたことを誇りにし、記念のために銘文を刻んだことが書かれています。
古代国家成立のなぞを解くための超一級の資料を直接見ることができる貴重な機会ですよ。
はにわの館
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さきたま史跡の博物館から徒歩すぐ、同じ公園の敷地内に「行田市はにわの館」があります。緑豊かな公園の中に現れる三角屋根と白い壁の小さな山小屋のようなかわいらしい外観です。
はにわの館では指導員の方に手伝ってもらいながら、自分だけのはにわづくりを手軽に楽しめる施設です。
はにわの館は入場無料。はにわ作り体験で使う粘土代のみ支払う仕組みです。粘土は1kg600円、2kgで1,000円です。
所要時間1時間30分〜2時間ほどで好みのはにわの形を作ります。その後は、はにわの館におまかせし、乾燥・焼成の工程を経て約1ヶ月でオリジナルのはにわを受け取れます。遠方の場合は配送サービスもありますよ(送料着払い配送)。
古墳散策の合間に立ち寄ってみてはいかがでしょうか。
行田市はにわの館の詳細はこちら
まが玉作り体験
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埼玉県さきたま史跡の博物館では、子供から大人まで夢中で楽しめる「まが玉作り」を体験できます。まが玉とは、「勾玉、曲玉」とも書き、古代の日本の装身具の一つです。つややかで丸く、ころんとしたフォルムがとてもかわいらしい石です。
まが玉作り体験では、白色・ピンク色・黒色の滑石を紙ヤスリで磨いて、オリジナルのまが玉が作れます。実際に作れるまが玉は、稲荷山古墳から出土した国宝に指定されている「まが玉」と同じサイズなのです。埼玉古墳群を訪れた記念になりますね。
体験時間は1日2回、9時40分と14時30分の回があります。所要時間は約1時間20分。定員は先着で20名です。体験希望の方は早めに会場に到着するようにしましょう。
料金表
一般 |
<白>250円 / <ピンク>300円 / <黒>350円 |
【埼玉】さきたま古墳公園周辺のごはん所をご紹介!
さきたま古墳公園で散策をしてお腹が空いたときにおすすめのごはん所を3つご紹介します。
かねつき堂
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かねつき堂は、行田市の名物料理である「フライ」と「ゼリーフライ」を楽しめる店です。
「フライ」とは、小麦粉を水で溶き鉄板の上で豚肉やねぎを入れて薄く焼いたお好み焼きのような食べ物です。行田市は昔から小麦の生産量が多く、農家のおやつとして食べられていました。
一方、「ゼリーフライ」とは、おからにジャガイモ・にんじん・刻みねぎを混ぜ、植物油で素揚げしたものです。小判形で一見コロッケのような見た目をしています。その形から、昔は「銭フライ」と呼ばれていましたが、それが訛って「ゼリーフライ」と呼ばれるようになったそうです。
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かねつき堂は、その名の通り目印は「忍城の鐘」です。忍城の改築の際に、昔の鐘楼を譲り受けたのだとか。
古墳散策の途中に行田市のソウルフードで休憩をしてみてはいかがでしょうか。
かねつき堂の詳細はこちら
一寸一さきたま店
一寸一さきたま店は埼玉古墳群からほど近く、二子山古墳のすぐとなりに位置しています。さきたま史跡の博物館入り口まで徒歩2分程度と、古墳観光にぴったりのごはん所です。
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一寸一さきたま店の一押しは海鮮料理と釜めし。活魚は静岡県沼津市から直送のものを使うなど、鮮度の良い素材が自慢です。
気軽なカウンター席から、広々した座席部屋が3部屋あり、歩き疲れた足をゆっくり休められます。
一寸一さきたま店の詳細はこちら
ほのぼの亭
ほのぼの亭は、二子山古墳からほど近い小ぢんまりとしたごはん所です。エントランスの壁はレンガ風で、たくさんの植物が植えられ、さながらカフェのような印象です。
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ほのぼの亭では、行田市名物の「フライ」や、焼きそばなどのランチメニューから、コーヒー、ケーキなどの休憩メニューまで取り揃えられています。
お食事だけでなく、歩き疲れたときに気軽に立ち寄れるお店です。
ほのぼの亭の詳細はこちら
魅力あふれる埼玉古墳群で古代のロマンを
埼玉県行田市の埼玉古墳群についてご紹介してきました。
歩いてまわれる範囲内に9基もの古墳があり、さらに博物館では国宝の出土品の数々を見られるなんて、古代ロマンを存分に感じられること間違いありません。
四季折々の自然に触れながら古墳散策に訪れてみてはいかがでしょうか。

埼玉県を楽しむ為のおすすめグルメ情報をはじめ、埼玉県民も知らなかった目からウロコの情報をお届けします。