7月2日は「うどんの日」だということをご存じですか?
香川県生麺事業協同組合が1980年に制定したもので、香川県の農家が7月2日ころの雑節「半夏生(はんげしょう)」のころにうどんを食べて疲れをねぎらう習慣にちなんだものです。このうどん、実は埼玉県でもよく作られており、埼玉県のうどん生産量は全国2位と言われているんです。
今回は「埼玉うどん」にフォーカスして紹介します♪
※掲載内容は執筆当時のものです。今後の状況により変更される場合があるので、最新情報は事前にご確認ください。
注目を集める「埼玉うどん」

間市在住の会社員、永谷晶久さんが立ち上げた「埼玉を日本一の『うどん県』にする会」。
FacebookやTwitterで埼玉うどんの情報を発信するほか、2019年には「スゴい!埼玉うどん王国宣言!」という書籍を出版しています。
永谷晶久さんは2020年にはTBSの「マツコの知らない世界」にも登場し、埼玉うどんを全国にアピールしました。
埼玉はうどんの生産量全国2位を誇る

もともと埼玉県はうどんとのかかわりが深く、農林水産省によれば、2009年のうどん(ゆで麺)の生産量は、香川県の3万8600トンについで全国2位の2万2350トンを記録しています。
2010年以降は農林水産省が統計方法を変更してしまったのでデータはありませんが、「うどん県」の香川県に次いで2位というのは驚きですね。
ちなみに大麦を含む「麦」として見ても、2020年の埼玉県の生産量は2万2300トンで全国10位となっています。
埼玉うどんの文化には欠かせない【麦王(麦翁、ばくおう)権田愛三】

埼玉県で麦の生産が盛んになったのは、熊谷市出身の「麦王(麦翁、ばくおう)」こと権田愛三(1850年~1928年)の努力のたまものと言われています。
権田愛三は麦の生産を増やすための研究に注力し、二毛作などを全国に広めて現在の小麦の生産の礎を築いた人物です。
権田愛三のおかげで埼玉県の麦の生産量は今も高く、埼玉にうどん文化が根付いた、ともいえるでしょう。
現在でも、県内では日常から冠婚葬祭などの「ハレの日」にうどんが食べられていますし、「郷土料理」として各地独自のうどんが食べ継がれています。
埼玉うどんの特徴とは
「埼玉うどん」の特徴の1つは、なんといっても種類の多さ。県内各地で25種類ものうどんが食べられています。ここではそれぞれの特徴を紹介していきます。
武蔵野うどん(県西部)

埼玉県西部から東京の多摩地域にひろがる「武蔵野台地」が発祥とされる郷土料理が「武蔵野うどん」です。
江戸時代、武蔵野台地の人々はハレの日の行事食として各家庭でうどんを手作りしていたと言われており、それが「武蔵野うどん」として今も残されています。
武蔵野うどんはコシの強い手打ちうどんで、麺は太目。しょうゆ味の温かい汁に冷たいうどんをつけて食べる「つけ麺タイプ」のうどんで、肉が入った汁で食べる「肉汁うどん」が人気です。
加須うどん(加須市)

名刹「不動ヶ岡不動尊總願寺」の門前で参拝客を手打ちうどんでもてなしたのがその始まりと伝わっています。
加須うどんの特徴はこしの強さとつるっとしたのどごし。手打ちうどんを打つ際の「足踏み」と「寝かせ」の行程に通常の倍の時間をかけることがその秘訣です。
盛りうどんを冷たいおつゆにつけて食べるのが一般的で、天ぷらとのセットもおすすめですよ。加須市では約20軒のうどん屋からなる「加須手打うどん会」が「食べ歩きスタンプラリー」を実施しています。
また、条例で6月25日を「加須市うどんの日」と指定し、市としてうどん文化を大切に守っています。
おっきりこみ(秩父地方)

「おっきりこみ」という少し変わった名前のうどんは秩父地方や群馬県で郷土料理として親しまれています。
幅広の生麺と野菜を一緒にぐつぐつ煮込んだ料理で、生地をへらの上にのせ、直接鍋に「切り込む」ことがその名の由来。うどんを下茹でしないのが特徴で、「煮ぼうとう」と呼ばれることもあります。
汁は味噌や醤油味で、根菜がたっぷり入ったものが定番です。特に冬の寒い日にはぴったりのうどんです。
ずりあげうどん(秩父地方)
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同じく秩父地方の伝統食が「ずりあげうどん」。
沸騰した鍋の中にあらかじめ打っておいたうどんを入れ、ゆであがったうどんを自分のお椀にずり上げて食べることが名前の由来で、忙しい農家の日常食として愛されてきました。うどんの種類というより「食べ方」なのかもしれませんね。
味付けは家庭ごとにさまざま。自分の好きな薬味をたっぷり入れ、卵を落としたり、天ぷらを添えたり……。手軽でアレンジが自由自在なのが魅力的な一品です。
あずきすくい(秩父地方)
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お汁粉に餅ではなくうどんを入れた「小豆ぼうとう」をルーツにしたうどんが「あずきすくい」です。小豆を入れた汁に「箕(み)」という穀物をふるう道具の形にかたどったうどんを入れて煮込んだ、スイーツ寄りの一品です。
名称はうどんで小豆をすくいながら食べることから。ちょっと変わったおやつにいかがでしょうか?
こうのす川幅うどん(鴻巣市)

町おこしにグルメを! というところはたくさんありますよね。鴻巣市の「こうのす川幅うどん」もその1つ。鴻巣市と吉見町の境を通る荒川の川幅が日本一広いことにちなみ、2009年に作られました。川幅なんと2537mもあるというから驚きです。
そのインパクトに負けないようにか、「こうのす川幅うどん」も規定では5cm以上の幅があることが条件となっていますが、店によっては8cm以上のものまであります。
もはや「本当にうどんなの?」と言いたくなる見た目ですね。重さもあり箸で持ち上げるのが大変です。
うどん自体は強めのコシともっちりした食感が特徴。汁とよく絡んでおいしいですよ。2015年には「埼玉B級ご当地グルメ王決定戦」で優勝しています。
一本うどん(羽生市)

羽生市の羽生パーキングエリア上りの「鬼平江戸処」で食べることができるのが、池波正太郎の時代小説「鬼平犯科帳」に登場する「一本うどん」です。
長さ50cm、太さ2.5cmという極太の麺が器の中に入っている姿は迫力満点ですね。半熟卵とねぎとともにいただきます。
熊谷うどん(熊谷)
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権田愛三の生誕の地、熊谷市では地産地消のブランドうどん「熊谷うどん」が人々に愛されています。熊谷うどんの条件は、熊谷産の小麦粉を50%以上使用しており、熊谷市でで製粉・製麺されたものであること。
お店によりつけうどん、ぶっかけうどんなど食べ方はさまざまです。つるつるもちもちしている麺はいくらでも食べられそうですよ。
煮ぼうとう(深谷市)

幅約2.5cmの幅広の生めんを深谷ネギや野菜とコトコト煮込んだ深谷市の郷土料理が「煮ぼうとう」。こちらは深谷市出身の偉人、「資本主義の父」こと渋沢栄一の好物としても有名です。
汁はしょうゆベースで、野菜からうまみが染み出しています。生麺から煮込むので適度なとろみが出て、冷めにくく、体を温めるのにぴったりです。冬の定番メニューとして人気の一品です。
小松菜うどん(蓮田市)
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埼玉県は小松菜の生産量が茨城県に次ぐ全国2位の県ですが、その小松菜をうどんに練りこんだのが蓮田市の「島田造り 小松菜うどん」。
老舗の製麺メーカー「岩崎食品工業」の企画販売会社「翁の郷」が開発したうどんで、美しいグリーンが特徴です。たっぷりのお湯でゆでて冷水で麺をしめてから食べるのがおすすめです。
小松菜にはビタミンAやカルシウム、鉄分が豊富に含まれている栄養価の高い野菜です。うどんで手軽に食べられるのはありがたいですね。
藤うどん(春日部市)
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美しい藤色が特徴の「藤うどん」は、藤の花で有名な春日部市の麺類業生活衛生同業組合が2003年に開発したうどんです。
美しい色の秘密は「アヤムラサキイモ」の粉。埼玉県産の小麦粉「あやひかり」と合わせてこねることで、つるつるしこしことしたのどごしの麺になりました。
食べ方のおすすめはざるうどん、または薄味の出汁とあわせたあたたかいおうどんで。県内で紫色のうどんが食べられるのは春日部市内だけですよ!
ゆずうどん(毛呂山町)
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江戸時代から続くゆずの名産地、毛呂山町で食べることができるのが、麺にゆずを練りこんだ「ゆずうどん」。薄黄色の麺が特徴的です。
ゆずの香りが爽やかな麺はつるっとしており、のど越しも柔らか。「柚子の郷製麺おたか本店」で食べることができますよ。
つみっこ(本庄市)
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本庄市で食べられている「つみっこ」は、小麦粉をだんご状に練った後、鍋にちぎり入れて野菜と煮込んだものです。本庄市で養蚕が盛んだったころ、忙しい仕事の合間に手間がかからない料理として愛されてていました。
名前の由来は練っただんごを「つみとる」の方言から。蚕を積むしぐさに似ていることから名づけられたという説もあります。
俗にいう「すいとん」の一種で、もちもちとした食感がおいしいですよ。
モロヘイヤうどん(羽生市)
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羽生産のモロヘイヤを粉末状にしてうどんに練りこんだのが「モロヘイヤうどん」です。
モロヘイヤによる町おこしの一環として作られた一品で、モロヘイヤらしい綺麗な緑が特徴。モロヘイヤのねばねばにより、もっちりとした食感になっています。
モロヘイヤはミネラルやビタミン、カロチンが豊富な野菜として有名ですが、カロチンはなんとにんじんの1.5倍も含まれているのだとか。栄養価たっぷりのうどんは健康によさそうですね。
にんじんうどん(新座市)
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新座産のにんじんを練り込んだオレンジ色の麺がきれいな「にんじんうどん」。村上朝日製麺所が2002年に開発したもので、こしは強めでシコシコとした食感です。
使われているにんじんは、市内の契約農家が栽培したもので、形崩れした規格外のニンジンを再利用しています。
小麦粉に対し30%の割合でにんじんが入っており、1人前には大人が1日に摂取すべきカロチンの半量が入っています。にんじん特有のくせはない麺なので、にんじん嫌いの子供にもおすすめです。
トマトカレーうどん(北本市)
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トマトの名産地、北本市の有名なB級グルメが「北本トマトカレー」。2011年の「第9回埼玉B級ご当地グルメ王決定戦inきたもと」で優勝したほか、2014年には「全国ご当地カレーグランプリ」でグランプリを受賞しています。
このカレーを使ったのが「トマトカレーうどん」で、「水織うどん」で食べることができます。
トマトカレーうどんには自家製のうどんを使用。北本トマトカレーにトッピングされている、肉巻きカツがうどんの上に乗っています。パルメザンチーズがかかったちょっとイタリアン風のお腹にたまる一品です。
かわじま呉汁(川島町)
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川島町の「かわじま呉汁」は冬の風物詩として有名な温かいうどんです。
そもそも「呉汁」は大豆をすり鉢ですって味噌などで味付けした汁で、冬の間の貴重なたんぱく源として愛されてきました。そのなかにうどんを入れて煮込んだ、いわば「呉汁煮込みうどん」が川島町では食べることができます。
川島町では呉汁のなかに油揚げと野菜を入れて食べてきましたが、調理が面倒などの理由で郷土食として忘れられつつありました。
そこで、川島商工会はオリジナルの「かわじま呉汁」を開発。国産の生の大豆を使い、いもがらと10種類以上の野菜を利用したもので、土なべか鉄鍋で提供するのがルールです。
このルールに則り、各店舗がうどん入りの「かわじま呉汁」を提供しています。11月から3月までの期間限定メニュー(※一部店舗を除く)なので、冬になったらぜひ食べてみてくださいね。
かわじますったて(川島町)
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同じく川島町の郷土料理「かわじますったて」は、暑い夏の農作業の合間に食べられていたさっぱりとしたつけうどんです。
漬け汁はすり鉢に胡麻と味噌を合わせてすり、さらに採りたてのきゅうりやみょうが、大葉といった夏野菜を混ぜ込んですります。最後に冷たい水に溶けば漬け汁の出来上がりです。
名前の由来は胡麻や味噌、野菜の「すりたて」を食べていたことから。うどんにかけてもおいしいですが、ごはんにかける食べ方もありますよ。料理としては宮崎県の「冷や汁」のお仲間ですね。
川島町では夏限定のメニューとして、原則として5月から9月まで提供しています。
シラオカ麺(白岡市)
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白岡市のご当地うどんが「シラオカ麺」です。市のマスコットキャラクター「シラオ仮面」とのコラボ商品で、市と市内の9つの飲食店の協力のもと、2017年に開発されました。
シラオカ麺の条件は、白岡産の農産物または市内の店から仕入れた食品を1品以上使っていることと、スープ・具・麺に白い食材が使われており、「白」がイメージできるメニューであること。
麺のジャンルは問わないので、うどん以外にもやきそばやラーメンも「シラオカ麺」として認定されています。お気に入りのメニューを探してみるのも楽しいですよ。
鳩豆うどん(鳩山町)
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鳩山産の黒大豆を練りこんだうどんが「鳩豆うどん」です。
細麺で黒い点が混じっており、見た目がそばに似ていることから「太い蕎麦」と呼ばれることもあります。つるつるしこしことした食感が特徴ですよ。
なお、黒大豆には腎機能を高める効果や活性酸素を除去する働きもあるのだとか。こちらも健康にいい一品ですね。
狭山茶うどん(狭山市・入間市)
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狭山市といえば日本三大銘茶の「狭山茶」で有名ですよね。
狭山茶うどんは狭山茶をうどんに練りこんだもので、狭山市と隣の入間市で食べることができます。狭山茶のほのかな香りがアクセントになっていますよ。
エキナセアうどん(寄居町)

出典:寄居町観光協会
寄居町のちょっと珍しい特産品といえば、「エキナセア」。別名は「ムラサキバレンギク」で、赤紫色の花がかわいらしい、世界3大ハーブの1つに数えられるキク科の植物です。
ミネラルが豊富で免疫力向上の効果があるハーブで、風邪や花粉症にも効果があるとされており、欧米ではハーブティーや薬として日常的に活用されています。
エキナセアうどんはエキナセアに加え、同じく町の特産品であるウコンや桑の葉を練りこんで作られた緑色のおうどん。
寄居産の豚肉やシイタケ、長ネギが入っており、白しょうゆベースのさっぱりとした汁とともにいただきます。「うどん 熊五郎」で食べることができますよ。
鳩ヶ谷ソース焼きうどん(川口市)
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川口市で有名なB級グルメといえば、日本5大やきうどんの1つ、「鳩ヶ谷ソース焼きうどん」です。
2009年に当時の鳩ヶ谷市と商工会青年部が町おこしのために開発したという焼きうどんの特徴は、オイスターとかつおのうまみが生きたオリジナルの特製ソース。1935年からあるという、ブルドックソースの鳩ヶ谷工場と共同開発しました。
なお、鳩ヶ谷市は2011年に川口市に編入合併されましたが、その名は焼きうどんに残されています。
鳩ヶ谷ソース焼きうどんの味はお店ごとにさまざま。食べ比べしてみると楽しいですよ。
また、専用ソースも販売されているので、オリジナルの鳩ヶ谷ソース焼きうどんを自宅で作ってみるのも楽しいかもしれません。
うちいれ(入間市)
入間市の郷土料理には「うちいれ」と呼ばれる煮込みうどんがあります。
地元産の野菜と小麦粉を練って幅広の麺にしたものを煮込んで食べるもので、味付けは味噌と醤油。ほうとうによく似ていますね。寒い日やご飯が足りないときに食べられていたそうで、寒い冬には最適の一品です。
のらぼう菜うどん(小川町)
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小川町付近で栽培されている伝統野菜の「のらぼう菜」を練りこんだうどんが「のらぼう菜うどん」。のらぼう菜はアブラナ科の野菜の一種で、江戸時代、天明・天保の飢饉の際に役に立ったといういわれがあります。
ビタミンCが豊富で栄養価が高く、えぐみもなく、麺との相性も良いことから町おこしの一環で「のらぼう菜うどん」が作られました。
麺はやわらかく食べやすいのが特徴。町内の数店舗で食べられますが、製麺会社「武州めん」の本店ではのらぼう菜うどんに加え、ゆでたのらぼう菜、のらぼう菜入り野菜のかき揚げも食べられますよ。
なお、のらぼう菜の収穫時期は春先なので、季節によっては提供していない場合もあります。事前にお店に確認しておきましょう。
埼玉独自の「うどんパスポート」
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埼玉県物産観光協会ではうどん文化の振興などを目的に、2019年から「埼玉うどんパスポート」を発行しています。
2020年9月には「埼玉うどんパスポート2020」アプリを配信。アプリでは埼玉県のうどん文化や各地のご当地うどんを紹介するとともに、県内60店舗の情報とクーポン券を提供していました。
残念ながら2020年版の使用期間は2021年2月28日までしたが、今年の配信を期待しましょう!
「うどん王国」埼玉県で埼玉うどんを堪能しよう!
うどんの生産量が全国2位という「うどん王国」埼玉県。「埼玉うどん」は25種類もあり、温かいものから冷たいもの、太いもの、平べったいものとその姿かたちや味はさまざまです。
お気に入りの「埼玉うどん」を見つけに、うどん王国を食べ歩いてみませんか?

旅行メディアから出産を機に独立した、埼玉県在住のフリーライターです。得意分野は旅行と歴史と食事。最近、公園やテーマパークを中心とした県内の幼児連れのお出かけ先には詳しくなりました。埼玉県の魅力を皆様に伝えられるよう、頑張ります!