今回は歴史ある「人形の街」、埼玉県鴻巣市の「鴻巣びっくりひな祭り」についてお伝えいたします。
「日本一のピラミッドひな檀で、子どもの幸福を祈願したい」「鴻巣にある運転免許センター帰りに、話題のひな人形を見たい」という方はぜひお読みください。
※掲載内容は執筆当時のものです。最新情報は事前にご確認ください。
【ひな人形の歴史】
上品でかわいらしい「ひな人形」は、女の子の幸せと無病息災を祈願する縁起物です。
「ひな人形」のはじまりは平安時代。天皇や貴族が集う宮中の人形遊び「ひいな遊び」と、紙・わら・草木などで作った人形(ひとがた)に厄を負わせて川や海へ流す邪気払いの風習「流しびな」が原型と考えられています。
時代とともに、ひな人形は暦を区切る「五節句」のうちの一つである3月3日に、子どもが健康で美しい女性に育ってくれるようにという願いをこめて飾られるようになりました。
今日、お内裏様・おひな様の1対である「親王飾り」が主流ですが、「ひな人形」には、個性豊かな15体の登場人物がいます。
15体を、赤い敷物・緋毛氈(ひもうせん)を敷いた7段・5段の「ひな檀」に御前揃えや雪洞(ぼんぼり)などの「お道具」と一緒に飾ったひな人形を「15人飾り」と言います。
7段・5段からなる「ひな檀」に飾る15体を、上から飾る順に解説しましょう。
親王(しんのう)
お内裏(だいり)様・おひな様こと、「親王」は、男雛(おびな)、女雛(めびな)の2体です。
三人官女
「三人官女」は、姫に仕える3人の女官。身の回りの世話や教育を担当しています。
五人囃子(ごにんばやし)
「五人囃子」は、元服(成人前)の少年5人組です。貴族の子弟で、雅楽の楽器を手に携えています。
右大臣・左大臣
「右大臣・左大臣」は、お内裏様に仕え、護衛する重臣です。右大臣は年配で、左大臣は若者です。
仕丁(じちょう)
「仕丁」は、表情豊かな宮中の使用人です。
このように、ひな人形には子どもを守ってくれるさまざまな役割と個性があります。それぞれの人形にこめられた意味を知れば、さらに鑑賞が楽しめるかと思います。
次に、埼玉県鴻巣市が「人形の街」となった経緯をひもといていきましょう。
【鴻巣びなとは】
「鴻巣びな」とは、江戸時代から380年続く「人形の街」、鴻巣市(中山道六十九次の鴻巣宿)で製作される華やかな「ひな人形」の総称です。
古くより人形の産地として有名な鴻巣で製作されるひな人形は、今日でも埼玉県を代表する伝統工芸品。明治期までの「鴻巣びな」は、京都の西陣から買い付けた生地に鳳凰の刺繍がほどこされるなどの精緻な細工が評判でした。その細やかな手仕事は現代に受け継がれ、雅やかで繊細な風情が人気です。
鴻巣が「人形の街」であるエピソードをいくつか紹介しましょう。
江戸時代の「鴻巣宿」は、中山道六十九次(木曽街道六十九次)の宿場町として発展。行き交う人々が様々な技術や文化を流入させ賑わっていました。
江戸時代中期になると、ひな人形や五月人形などの「節句人形」は精緻な手工芸品として評判に。鴻巣は、人形店が軒を連ねる「関東三大雛市(鴻巣・越谷・江戸十軒店)」の一つに数えられるようになったのです。
着付けの技術は特に名高く、職人たちは江戸から鴻巣まで修業に来ていたほど。当時の裁判所にあたる「奉行所」で、優秀な職人の「引き抜き」トラブルがあったことも記録に残っています。
織物の流通が盛んだった中山道の宿場町であったことが、着付け技術の研鑽に寄与していたと推察します。
明治時代に入ると、埼玉県内の節句人形業者は越谷6店、大沢3店、岩槻3店。鴻巣は30店・職人300名という規模に成長しました。現在でも複数の人形店がある「人形町」に、その名残をとどめています。
令和に入った現代も、鴻巣は歴史ある老舗が立ち並ぶ「人形」の街。歴史ある「ひな人形」は今日も鴻巣のアイコンとして地域活性化や街のPRに活躍しています。
【鴻巣びっくりひな祭りとは】
2023年で第19回目となる「鴻巣びっくりひな祭り」は、「ひな人形」と鴻巣市の魅力をさまざまな展示で伝えるイベントです。
「自宅のひな人形は2体の”親王飾り”だ」「15体フルセットのひな人形を子どもに見せたい」という方は、しっかり鑑賞できるチャンスですね。
見どころは、日本最大の「ピラミッド型ひな檀」。第18回目となる2022年度は、メイン会場となるショッピングセンター「エルミこうのす」に、31段・高さ7mというサイズのひな檀が設置されます。
江戸時代から現代に伝わる「ひな人形」が、地域の人々が心を込めて作った大きな「ひな檀」に展示される様子は感動必至です。
【人形感謝祭りとは】
鴻巣ひな人形協会は、毎年11月14日に古くなった人形をお焚き上げする「人形感謝祭り」を開催しています。
「ひな人形」には、子どもに対する親の願いがこめられています。お嬢さまの成長は、いにしえの風習のように人形たちが厄や災いを背負ってくれたことも関係あるかもしれません。
しかし大切な「ひな人形」も、壊れたり、家の間取りの問題などで飾れなくなったりということがあるでしょう。
思い出や気持ちがこめられた人形は、処分に困るものです。お坊さんのお経で、長年の感謝を伝えましょう。
会場は、本町の寺院「勝願寺」。「後陽成天皇御宸筆」などの有形文化財や、徳川家康の家臣であった「伊奈忠次墓」などの史跡を擁する鴻巣のお寺です。
「ひな人形をお焚き上げして供養したい」という方はぜひチェックしてください。
【雛人形が見学できるメイン会場】
エルミこうのすショッピングモール
日本一の「ピラミッドひな檀」は、「エルミこうのすショッピングモール」に設置されます。
JR高崎線「鴻巣駅」を降りてすぐの場所にあるショッピングセンターなので、自動車免許の更新のため「埼玉県運転免許センター」に来たという方にもおすすめです。
2022年「エルミこうのす」には、1,582体もの人形が展示されました。
2023年の展示期間は、2月17日(金)〜3月4日(土)、10:00〜21:00となっています。最終日は15:30までとなるのでご注意ください。
【雛人形が見学できるサテライト会場】
メイン会場に加え、市内4箇所に設置された「サテライト会場」も、趣向を凝らした展示が見ものです。
2023年の展示期間は、「ひなの里」「コスモスアリーナふきあげ」が、2月17日(金)~3月4日(土)9:00~17:00となっています。
「花久の里」が2月17日(金)~3月5日(日)9:00~17:00となっています。
「パンジーハウス」のみ、2月7日(火)から展示がスタート。「一足早く”ひな人形”を鑑賞したい」という方におすすめです。3月5日(日)9:00~17:00となっています。
全会場とも、入場は終了時間の30分前なのでご注意ください。
鴻巣市産業観光館「ひなの里」
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「ひなの里」では、明治築造の蔵において「一番親王飾」「つるし飾り」が展示されます。「鴻巣びな」の歴史展示もあるので、ぜひチェックしてください。
花と音楽の館かわさと「花久の里」
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「花久の里」では、花と人形の「六角錐ひな壇」と「つるし雛」が展示されます。
鴻巣農産物直売所「パンジーハウス」
「パンジーハウス」では、「三面ピラミッドひな壇」、花をあしらった「等身大ひな人形」が展示されます。
他の会場は2月17日(金)展示開始ですが、こちらは2月7日(火)からスタートです。
お花が好きな方は、鴻巣産の「パンジー」「ビオラ」「プリムラ」「シクラメン」をお土産にしてはいかがでしょう。
“コスモスアリーナふきあげ”
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体育館とグラウンドなどを擁する複合施設「コスモスアリーナふきあげ」では、「八角錐ひな壇」が展示されます。
「スポーツの練習試合でコスモスアリーナへ来た」という方は、ぜひ展示もご覧ください。
埼玉鴻巣のピラミッドひな壇で「鴻巣びな」を見よう!
「ひな人形」は、無病息災の気持ちがこめられた伝統的な手工芸品です。
この春は、地域活性化の思いがこめられた鴻巣のピラミッドひな壇でゆっくり鑑賞してみませんか?
ぜひ、美しい「ひな人形」に癒されてください!
埼玉県戸田市に住む40代女性です。植物、無印良品、和菓子、浦和の蔦屋書店、大宮のecuteを愛してます。