皆さんは「空き家問題」についてご存知でしょうか?現在、埼玉県内の空き家率は10.2%と、約10件に1件が空き家になっており、年々増え続けています。
この空き家問題の解決に向けて、鶴ヶ島市にある「埼玉県立鶴ヶ島清風高校」と、地域課題解決コンサルティング会社「株式会社地域デザインラボさいたま」(以下、ラボたま)が協力して動き出しました!
今回は鶴ヶ島清風高校×地域デザインラボさいたまの連載第1回目として、空き家問題の現状や課題について学んだ講義の様子をお届けします。
※掲載内容は執筆当時のものです。最新情報は事前にご確認ください。
「地域デザインラボさいたま」(愛称:ラボたま)ってどんな会社?
地域デザインラボさいたまは、埼玉りそな銀行の100%子会社として、2021年10月に設立されました。銀行では対応できない、地域の「こまりごと」を解決するために、様々な事業に挑戦しています。
具体的には、河川の利活用や観光適正化のために飯能市の飯能河原の有料化実証実験を行ったり、公園から地域の賑わい創出を目的として、志木市のいろは親水公園の活用方法を検討したり、行政・民間企業・大学等と連携しながら、県内全域で地域課題解決に向けた事業を行っています。
どうして鶴ヶ島清風高校×ラボたまが空き家問題に取り組むことになったの?
今年(2023年)3月頃、清風高校からラボたまに探究学習(※1)のカリキュラムや進め方についての相談がありました。
それをきっかけに、地域課題解決事業として取り組んでいた空き家事業を、高校生向け住教育を合わせたカリキュラムにアレンジした授業を実施することになりました。
探究学習(※2)の一環として、空き家に関する講義、実際の空き家調査、啓発方法の検討を行い、成果発表会を実施する予定です。
なお、本取り組みは 国土交通省の令和5年度「空き家対策モデル事業」(※3)に採択されています。
(※1)高校生が自ら地域課題等の解決方法を考え、発表・啓発を行う授業のことで、2022年度から必修科目となっている。
(※2)学習指導要領の改訂により2022年4月に「総合的な学習の時間」から変更。自己の在り方や生き方を考えながら、よりよく課題を発見し解決していくための資質・能力を育成することを目指す。
(※3)NPOや民間事業者等の創意工夫によるモデル性の高い空き家活用に係る取り組みに対して国が直接支援し、その成果の全国展開を図る事業。
空き家について、どんな授業を行うの?
清風高校の1年生約200人が、空き家の講義や実際の空き家調査を通じて、空き家問題について学びます。また、埼玉県へ移住者された方々へのインタビューを通じて、まちの魅力について考えます。
生徒達はラボたまと連携し、空き家を放置することのデメリットや、家族での話し合いを促す啓発ツールを作成、住民向けの成果発表会を実施する予定です。
空き家所有者だけでなく「今後空き家を所有する人達(空き家予備軍)」が行動するきっかけにしてもらうことが目的です。
鶴ヶ島清風高校で空き家に関する講義を実施!
ここからは、10月5日(木)に実施したラボたまの空き家に関する講義の様子をお届けします。
空き家講義当日
生徒達へ空き家問題に関する事前アンケートを実施したところ「空き家問題について知っている」と答えた生徒は全体の4割程度でしたが、鶴ヶ島市の空き家の状況についても知っていると答えた生徒は1割未満で、多くの生徒はこの問題について詳しく知らないようです。
講義のために体育館に集合する生徒達。普段は見ない大人たちがたくさんいて、少し緊張気味のようです。
まず、講師を務めるラボたまの説明から始まりました。皆さん、埼玉りそな銀行は知っていても、子会社のラボたまについては知らなかったようで、興味深く話を聞いていました。
次に、探究学習の目標について勉強しました。探究学習は「確かな根拠を持って答えへと向かうこと」を目的として実施します。
今回、生徒達は数ある学習テーマの中で、地域課題の一つである「空き家問題」について学んでいきます。
鶴ヶ島市について知る
皆さんは鶴ヶ島市と聞いて何を思い浮かべますか?鶴ヶ島市の「テキストマイニング(※)」を見ると、インターネットで良く検索されているのは「駅」「市役所」「図書館」「教習所 「ラーメン」ということが分かります。
また、詳しく調べてみると「tsutaya」+「跡地」というキーワードも検索されていて、「鶴ヶ島市のtsutaya跡地には何かできるのか」気になっている人が多いのかも知れません。
(※)膨大なテキストの山を分析し、キーワードに関連する情報をマイニング(掘り当てる)するもの
次に、鶴ヶ島市の企業、人流、人口推移をデータやグラフから推測し、鶴ヶ島市の総人口は2045年までにどのくらい減少するかを「①▲1,000人 ②▲5,000人 ③▲10,000人」の三択で予想しました。
約20年後の鶴ヶ島市の人口はどうなっているのでしょうか。答えは…
「③▲10,000人」でした。(▲12,000人)
総人口の6分の1が減ってしまうという結果に、生徒達もびっくりしていました。こういった問題に対して、まちはどんな対策を行っているのでしょうか。
鶴ヶ島市のまちづくりについて知る
鶴ヶ島駅周辺の人口は2015年~2020年は増加傾向だったのに対し、2020年~2030年は減少する見込みになっています。
そこで、鶴ヶ島市は鶴ヶ島駅周辺地区まちづくり構想「Nゲージとガーデンパーク(仮)」を進めています。
鉄道模型メーカーの関水金属と鶴ヶ島市が共同で、新工場と隣接する市の児童公園を一体的に整備します。小型機関車の展示や走行スペース、鉄道模型の展示施設などを設ける方針で、24年5月ごろの完成を予定しています。
併せて、鶴ヶ島駅前の「鶴ヶ島通り」も、道路整備を行い、多様な人々の交流を生み出す場として整備を行う予定です。
住民からの意見を集約し、まちづくりに関する方針を定めた上で、鶴ヶ島駅周辺地区を「歩きたくなるくつろぎとにぎわいのまち」にすることを目指しています。
空き家が生まれる背景と空き家の現状について
ここから、空き家問題について考えていきます。空き家が発生する要因の1つに「ライフステージの変化」があります。
実際に、①これから1人暮らしをする場合 ②高齢者(自分の祖父祖母)が1人暮らしをする場合、どのような物件に住みたいかを考えてみました。
生徒からは「駅や商業施設から遠くて築年数が古くても、賃料が安い家に住みたい」という意見がありました。
しかし、高齢になると、子ども達の住む駅や商業施設に近い場所に移り住んだり、介護施設に入居して、住まなくなったりします。そうすると「空き家」が生まれます。
国が定めている空き家の定義は「1年以上誰も住んでいない、もしくは使用されていない建物」となっています。
そこで、1年以上住んでいない家のイメージを考えました。皆さんは次の2つの家のうち、どちらが空き家だと思いますか?
生徒達はほとんどがBのボロボロな家を選んでいましたが、正解は…どちらも空き家です!
実は、空き家の中でも、見るからに空き家とわかるものより、見た目ではわかりにくい空き家の方が多いです。きちんと管理されていない空き家(放置空き家)が問題になっています。
次に、全国・埼玉県・鶴ヶ島市の空き家について、クイズ形式で見ていきました。
埼玉県は「空き家率」で見ると全国47位と、一見空き家問題は深刻でない印象を持ちますが、「空き家数」で見ると約35万戸と全国で8番目に多いことが分かりました。
さらに、鶴ヶ島市は埼玉県の空き家率(10.2%)を上回る空き家率(11.6%)となっており、県内では18番目に空き家率が高いということも分かりました。
全体を通して学んだこと
今回の授業では、鶴ヶ島市の現状やまちづくりについて知り、空き家とは何か、なぜ問題になっているのか等を学びました。
皆さん、最初は馴染みのないテーマに難しそうな顔をしていましたが、クイズやディスカッションで分かりやすく学ぶことができたようで、最後は楽しそうな顔をしていました。
空き家問題は誰もが直面する問題
鶴ヶ島市に限らず、空き家は全国的に増加しています。野村総合研究所の調査によると、2030年には全国の空き家率が30%台に上り、約3軒に1軒が空き家になる可能性があるそうです。新築物件の増加、人口減少、高齢化によって、空き家は増え続けています。
空き家問題解決の1つとして「早めに家族と自宅の方針を話し合うこと」が挙げられます。今回の高校生との取組みを通じて、自分の自宅や空き家について考えるきっかけにしてもらえたら嬉しいです。
次回は11月16日に、埼玉県に移住され、空き家を利活用されている方2名へのインタビューを予定しています!お楽しみに!
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