日高市に店舗を構える備前屋は、150年以上続く狭山茶専門店。
創業から一貫して狭山茶を扱いながら、お茶といえば「渋い」というイメージにとらわれない、新たな日本茶の可能性も発信しています。
今回はそんな備前屋を訪れ、こだわりの狭山茶を試飲させてもらいました。
※掲載内容は執筆当時のものです。最新情報は事前にご確認ください。
日高市「備前屋」は歴史ある狭山茶専門店
狭山茶が主に生産されるのは、埼玉県西部の入間市、狭山市、所沢市を中心とする狭山丘陵地域。
宇治茶、静岡茶に並ぶ「日本三大銘茶」の1つで、特に味の評価が高いのが狭山茶の特徴。渋味が少なく、深いコクと濃厚なうま味を持つお茶として知られています。
そんな狭山茶の専門店であり、明治初年の創業から150年以上もの歴史を持つのが日高市にある「備前屋」です。
埼玉西部地区12ヵ所から供給される荒茶をすべて自社工場で仕上げ、袋詰め、販売を行っています。
豊富な品揃えを誇る備前屋の店内
JR川越線「武蔵高荻駅」から徒歩5分と、アクセスも良好な備前屋。
趣深い瓦屋根の店内に入ると、様々な品種の狭山茶や個性豊かな茶器がずらりと並びます。
どれも狭山茶本来の味わい、水色、香りを生かした高品質な狭山茶。じっくりと商品を見比べていると、商品の説明やパッケージに「萎凋(いちょう)」という言葉を見つけることができます。
なかなか聞きなれない言葉ですが、萎凋とはお茶作りの工程の一つ。備前屋はこの萎凋を取り入れたお茶作りを追求し、「萎凋香専門店」を掲げる、ちょっと珍しいお店でもあるんです。
備前屋が掲げる萎凋香専門店とは?
もう少し説明すると、萎凋(いちょう)とは摘み取った茶葉を静置し、70%ほど萎れさせる工程のこと。萎凋を経ることによって、茶葉が特有の香りを放つようになります。
この香りは「萎凋香(いちょうか)」と呼ばれ、その華やかさは“花や果実のよう”とも表現されるほど。烏龍茶や紅茶はこの萎凋が施されるお茶ですが、緑茶はというと、萎凋は味を悪くするものとしてこれまで避けられてきた歴史があります。
しかし備前屋ではこの萎凋香に注目し、これからの日本茶を萎凋香で盛り上げたいと、香りを追求した狭山茶作りに取り組んでいます。
店内ではすべての狭山茶の試飲が可能
そんな備前屋の萎凋茶は、品種や製法によって種類もさまざま。飲み比べてお気に入りを見つけたい方は、店内で試飲も可能です。
今回はお店の一角にある素敵な茶室風のスペースで、狭山微醗酵茶「琥白」を試飲させていただきました。
「世界緑茶コンテスト2014」で最高金賞を受賞した、香り高い萎凋香が楽しめるお茶です。
澄んだ琥珀色のお茶は、口に含むと上品な甘味が広がります。渋みはまったくなく、飲み口はとてもまろやか。
今まで飲んだどのお茶とも違う味わいで、とても不思議な感覚でした。朝飲めばその日1日を穏やかな気分で過ごせそうな、贅沢な味わいのお茶です。
一般的な緑茶よりも少し濃い緑色の茶葉は、自然仕立ての「野木園」という茶園で1つ1つ手で摘み取っているのだそう。
さらなるこだわりは、製茶の仕上げに行う「火入れ」の工程。通常の日本茶は摘んだ後の茶葉を蒸して発酵を止めるのに対し、琥白は茶葉を天日干し→屋内で萎凋させてから、釜で炒ることで茶葉の発酵を止める「釜炒り製法」を採用しています。
この釜は台湾からわざわざ取り寄せたものなんだそう。丁寧に萎凋をほどこし釜で炒って仕上げることで、花や果実のような香りとクリアな味わいが楽しめるのだそうです。
さくっと飲めるティーバッグもおすすめ
店内にはそんな急須で淹れる狭山茶のほか、気軽に飲めるティーバッグの狭山茶も充実しています。
例えばこちらは曜日ごとに異なるフレーバーが味わえる狭山茶ティーバッグ。パッケージに描かれたイラストにもほっこり癒されて、毎日のティータイムが楽しみになりますね。
いただいた中でも特に惹かれたのは、狭山茶煎茶と国産の有機ペパーミントがブレンドされた狭山茶ハーブティー。
狭山茶のコクとミントの清涼感が調和して、ちょっと気分を変えたいときにぴったりのお茶でした。月曜日の朝に飲んで、一週間をすっきりスタートさせたいですね。
備前屋はお茶の世界が広がる狭山茶専門店でした
手間ひまかけた萎凋作業をはじめ、様々な製法を試みることで、新たな狭山茶の味わいを提案する備前屋。
専門店だからと肩肘張らず、自宅やギフト用のお茶を探しに気軽に訪れたくなるお店です。
ほっと一息つきたいときのお供に、ぜひお気に入りの狭山茶を見つけてみてくださいね。
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