子どもたちにとっては身近であり、大人になるとその響きだけでノスタルジーな気分に浸ってしまう「学校給食」。
埼玉県北本市に、そんな学校給食の魅力が詰まった施設があるのをご存じでしょうか?
今回は「学校給食歴史館」を見学してきましたので、その様子を詳しくご紹介します。
※掲載内容は執筆当時のものです。最新情報は事前にご確認ください。
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日本でただ一つ!学校給食歴史館とは?
「学校給食歴史館」は、学校給食に関する歴史資料が展示され、給食という文化をより深く学ぶことができる施設です。
珍しいのもそのはず、こうした給食の歴史資料を集めた施設はなんと日本でここだけ!そんな貴重な建物が埼玉にあるなんて嬉しいですね。
「埼玉県学校給食会」と同じ敷地内にあり、アクセスはJR高崎線北本駅東口から市内循環バスで約15分。入場料は無料で、平日のみの開館となっています。
今回案内してくださったのは、館長の吉田さん。混雑時以外は希望者に詳しい説明をしていただけるので、ぜひ案内をお願いしてみてくださいね。
給食のサンプルがたくさん!自分が食べていた給食を探そう
館内には年代ごとに給食献立のサンプルがずらりと並び、約130年間の給食の歴史を辿ることができます。
日本で初めての給食は、明治22年。山形県の大督寺内にある忠愛小学校で、貧困家庭の子どもたちに無償で昼食を提供したのが始まりとされています。
おにぎり、塩鮭、菜の漬物とシンプルながら日本人に馴染みの深いメニューですね。
現在、大督寺境内には「学校給食発祥の地」の記念碑が建てられていますが、館内入口ではそのレプリカが出迎えてくれます。
その後、給食は子どもたちの発育に役立つとして、徐々に日本中に普及しましたが、第二次世界大戦の影響で物資が不足し、給食もほとんどが中止へ。
1923年から1942年では、献立も質素になっている様子が分かります。
国民の多くが栄養不良となり、子どもたちもやせ衰えていく中、アメリカの宗教団体や慈善団体によって送られてきた「ララ物資」やユニセフの支援を受けて、給食が再開しました。
それからはコッペパンや、苦手な人も多かったという脱脂粉乳が登場し、おかずも徐々に増えていきます。
昭和40年頃にはソフト麺も登場。昭和51年には学校給食用のお米が35%値引きで買えるようになり、献立にもご飯が頻繁に出るように。
懐かしの三角牛乳もありました。三角牛乳は1枚の紙で作ることができて経済的でしたが、上に重ねて積めないことに加えて搬送の際に専用のケースが必要などの理由から、次第に現在の四角いパックへと変化していったそうです。
自分が食べていた頃の給食がどの辺りだったか、探してみると面白いですね。
館長の吉田さんによれば、やはり子どもたちよりも大人の来館者のほうが「懐かしい」と盛り上がるのだそうですよ。
給食用食器の移り変わり
献立とともに、食器も大きく変化しました。
熱くて手で持つのが大変だったアルマイト製食器から、現代の軽くて安全性の高いポリエチレンナフタレート製食器に至るまで、さまざまな努力と工夫があったことが分かります。
埼玉県の食材が給食に!増加する地産地消献立
地元の農畜産物を地元の給食に取り入れた「地産地消」の取り組みも、パネルで見やすく展示されています。
県内に約270ヶ所の農産物直売所があり、“暮らしのとなりに産地”をもつ埼玉県では、平成10年から県産米100%の給食がはじまりました。
その後、県産小麦100%使用の「地粉うどん」、県産小麦と県産米の粉を50%ずつ使用した「さきたまライスボール」など、美味しくて地元食材に愛着が湧くようなメニューが次々に生み出されています。
世界の食文化に触れる「ワールドカップ給食」
ワールドカップ給食とは、2002年に行われたサッカー日韓ワールドカップ出場国のキャンプ地を中心に実施された、出場国の料理を取り入れた給食です。
スロベニア・セネガル・カメルーンなど、なかなか食べる機会のない国の料理を身近な給食で味わい、「食を通した国際交流」を行いました。
現地の味に近づけつつ、給食に取り入れるための食材や調理上の工夫など、学校栄養士さんらによって考え抜かれて実現した献立なのだそうです。
スロベニア共和国のポテトポレンタ。レシピを読んでいるだけでお腹が空いてきます!
ユニークな食育教材・資料室
こちらの棚には、小学校などの食育の授業に貸し出しているユニークな教材が展示されています。
ぬいぐるみの「お米くん」は、チャックを開いていくとモミの殻→玄米の皮→胚芽とあらわれ、最後にはかわいらしい表情の白米が!
カツオのぬいぐるみは各部位がマジックテープで着脱でき、解体しながら部位ごとの名前やさばき方を学ぶことができます。どれもとても良くできていて盛り上がってしまいました。
資料室には、給食に関する書籍が揃っています。椅子もあるので、どこか趣を感じる館内でゆっくり読書にふけるのも良さそうです。
老若男女楽しめる!学校給食歴史館へ出かけよう
埼玉県学校給食会は、もうすぐ設立70周年を迎えるそうです。
館長の吉田さんは、今後を見据えてリニューアルや新しい展開も考えていきたいとお話してくださいました。
これからも、給食とともに進化し続ける貴重な歴史館の未来が楽しみですね。
時代とともに移いゆく学校給食に触れながら、懐かしい子ども時代に思いを馳せてみてはいかがでしょうか。