おせんべいで有名な草加。実は、旧日光街道に美しい松並木が残っているのをご存知でしたか?
1.5キロメートル、600本の松並木を臨む「草加松原」を歩いてみると、今まで知らなかった草加が見えてきました。
※掲載内容は執筆当時のものです。最新情報は事前にご確認ください。
草加の松並木の歴史とは|「おくのほそ道」にも関連する名勝地
そもそも「日光街道」とは江戸から宇都宮を経て日光へいたる街道のこと。もとは沼地だった土地に造成された「草加」は、江戸時代までは農業が中心の村でした。
幕府の命によって「草加宿」が設置されたのが江戸時代のこと。その街道の整備の際、松が植えられたことが草加松原の松並木のはじまりだとか。
古くより景勝地として賑わった松並木ですが、明治10年に800本あったといわれる松もいっときは60数本まで減少。その後設立された松並木保存会による手厚い保護があり、現在は600本以上にまで回復しています。
また、この草加宿は松尾芭蕉の「おくのほそ道」に登場する最初の宿としても有名です。
「月日は百代の過客にして…」という書き出しは誰もが一度は耳にしたことがあるはず。このあと紹介する「百代橋」や、「漸草庵 百代の過客」にもその言葉は用いられ、草加に根付いた文学性を感じますね。
綾瀬川沿いに続く全長約1.5キロの草加松並木はお散歩やウォーキングにもぴったり。
では、実際に歩いてみた草加松原・松並木を、写真とともにご紹介していきましょう。
草加松原をお散歩♪松並木と周辺のスポット
スタートは獨協大学前(草加松原)駅から歩いて15分ほどの「草加松原・北端」から。彫刻家、三澤憲司による「水環」が目印です。
このあたりはせせらぎゾーンになっていて、穏やかな流れが松並木を映しています。鳩が水を飲みに来ていたり、お散歩中の方がベンチでひと休みしていたりと、地域の方の憩いのスポットとなっているようです。
松並木を眺めるのに絶好のビュースポット 百代橋
松並木を眺めながら5.6分ほど歩いていくと、「百代橋」が見えてきました。
草加のシンボルのひとつになっているこの橋は、和風の太鼓型歩道橋。もう少し先の「矢立橋」と対を成す存在です。
橋の上から来た道を振り返ったところです。太鼓橋なので、松並木と橋をバランスよく撮ることができて嬉しいですね。
「百代橋」を渡り切ったあとは綾瀬川にかかる「松原大橋」を渡り、対岸を探索してみます。
対岸に松並木を望む草加市文化会館へ
さて、「獨協大学前<草加松原>駅」東口から松原大橋を渡り、右手に「草加市文化会館」が見えてきます。
ホールや会議室、実習室のほか、託児室や喫茶室、アンテナショップなど、さまざまな施設を備えた会館です。
一階にある「伝統産業展示室 ぱりっせ」へ寄らせていただきました。
草加と言えばやっぱり草加せんべい!こちらでも種類豊富なおせんべいを買うことができます。
こちらへ寄ったら、大きなせんべいレプリカの前で草加せんべいマスコット「パリポリくん」と記念撮影は欠かせませんね!
このパリポリくん、草加せんべいのお店にマスコットで置いてあったり、コミュニティバス(その名もパリポリくんバス!)に大きく描かれていたりと、草加で避けて通ることはできない人気者です。
また、草加は草加せんべいだけでなく、革製品や染物の産業も盛ん。草加で作られた様々な製品が置かれているので、草加の産業をぐっと身近に感じられる良い機会になりました。
旅の途中でお茶を一杯 漸草庵 百代の過客(ぜんそうあん はくたいのかかく)
次は草加市文化会館の本館のすぐ横にある「漸草庵 百代の過客」を訪れてみましょう。
こちらは、草加市制60周年を記念して平成31年に出来た市民のための施設。和の文化や芸術に親しみ、さらに市内外へ発信できるよう、貸し出しを行っています。
入っていくとまず目につくのが大きな樽のようなもの。こちらは「樽茶室」といって、実際に使われていた醤油樽を改造して作った2畳ほどの茶室。このような特別な空間でいただくお茶はどんな味がするのでしょうか。
入口のまえで、何かきらきらした音がするな、あたりを見回していると、水琴窟について職員の方が説明してくださいました。
手や口を清めるために手水鉢を使うと、鉄琴をやさしく慣らしたような音が聞こえてきます。水を流す砂利の下に甕を埋めることで、このような音が奏でられるのだそう。漸草庵の近くに来た際には、ぜひぜひ寄ってみてください。
「漸草庵 百代の過客」は木造平屋建ての数寄屋建築。決して華美ではありませんが、日本の情緒を贅沢なまでに感じられます。木や竹、畳の静かな風合いと、大きな窓からは対岸の松並木。また、襖のむこうに日本庭園をのぞむ茶室もあります。
職員の方に伺ったところ、やはり茶会や句会の催しで使われることが多いとのこと。近隣の市民よりは割増になりますが、草加市民以外も予約のうえ借りることができます。
利用に際しては予約開始日や使用上の注意が公式サイトに詳しくありますので、必ず確認してくださいね。
また、漸草庵の立札席には、気軽に立ち寄ることができるお休み処があります。
いただいたのは、季節の上生菓子と抹茶のセット。夏季限定で冷やし抹茶にしてもらうこともできます。
この日のお菓子は「濡れ燕」。さらりとした餡がきりっとした冷たい抹茶ととてもよく合います。
こちらのお休み処はまさに穴場という感じですが、職員の方は「ぜひもっと気軽に訪れてほしい」と仰っていました。数寄屋造りの建築を感じながら、丁寧に点てられたお茶を味わえる気軽な場所はそうないですよね。
ご近所の方も、そうでなくても、ぜひ足を運んでほしいすてきな場所です。
さて、ひと休みのあとは「ハープ橋」を渡ってまた松並木へ戻ります。
百代橋と対を成す太鼓型の橋 矢立橋
先程の「百代橋」と対を成す「矢立橋」。こちらも太鼓橋ですが、欄干やタイルの意匠が違っていて、見ていて楽しいです。
参勤交代を描いたものでしょうか、矢立橋のタイルの絵柄は何種類かありました。足腰の運動がてら、ぜひ見に行ってみてくださいね。
かつての河岸の面影を再現した 札場河岸公園(ふだばかしこうえん)
草加宿芭蕉庵
あちこち見ながら歩いてきた松並木も終点です。松尾芭蕉翁像のある「札場河岸公園」には「草加宿芭蕉庵」というちょっとした売店兼お休み処があります。
「クーラー冷えてます。中へどうぞ」という貼り紙を嬉しく思いながら、お邪魔しました。
カゴに盛られた松ぼっくりも、なんだか由緒正しく見えてきます。
草加に住んで長いというスタッフの方は、「ここの松並木は本当に昔から綺麗なのよ。もっと有名になってもいいくらい…それからここらへんは桜の木もあるから、春も、それから紅葉の時期も、ぜひ見に来てほしいわね。」と仰っていました。
「冬はこも巻きしちゃうけど…でもそれも風物詩よね。」
草加松原の松並木が、地域の人に愛され、守られていることを感じる一言でした。
すぐ横にある望楼にもぜひ昇って行ってね、ということで、お礼を言ってお別れします。
その望楼の中。想像以上に立派なつくりに驚きました。艶やかに磨かれた階段を昇って行きます。
望楼の窓からは松並木を見渡すことができます。桜や紅葉の時期も綺麗でしょうね。冬の風情ある「こも」に巻かれた松もぜひ見に来たいものです。
埼玉県民なら草加の松並木を一度は歩いてみよう♪
お散歩コースにちょうどよい長さの草加の松並木。
草加松原へ出かけて、埼玉県の歴史や情緒を感じる時間をつくってみませんか。
埼玉県を楽しむ為のおすすめグルメ情報をはじめ、埼玉県民も知らなかった目からウロコの情報をお届けします。